AERAの報道に惑わされて、熊よけスプレーに関して間違った情報を信じてしまう方がいるようです。
もちろん発信元がAERAなので、多くの方は、その信憑性や編集の偏りは十分にわかっていると思います。
ですが、一部の方はもしかしたら、マスコミの記事だからという理由や、その根拠などを調べないまま、素直に信じてしまうかもしれません。
忙しく日々過ごしている方には、いちいち一次情報など調べていられない、という方も多いかもしれませんしね。
AERAによる以下の記事を始めとした熊よけスプレー関連記事は、偏向と誤情報が多くを占めており、注意が必要です。
「間違いだらけの偏向報道:AERA クマスプレー「補助金」問題 自称「クマよけスプレー」販売会社を直撃」
それでは、今回はこの記事の何が問題なのか、具体的に解説します。
「米国EPA基準がある」という誤情報
これには正直、私も驚きました。
記事によると、米国には「熊よけスプレーのEPA基準」があるということなので、私は何日もかけて、その一次情報を探しました。いわゆる、その根拠です。
しかし、いくら⽶国EPA(環境保護庁)をあたっても、その情報が皆無なのです。
さらに調べていくと、
米国EPAは殺虫剤や農薬などが人や環境に対して安全なのかを審査し、その製品を登録している
ということがわかりました。
つまり、人や環境に安全なのかを指していて、クマを撃退できるかを指していません。
なのでもちろん、EPAには熊よけスプレーの性能の基準はなく、当然ですが認証や認定という概念がありません。
ところがAERAや周囲の自称専門家たちは、EPAに
- 性能基準があり(実際はない)
- 認証し(認証などしない)
- 認定し(認定などしない)
- 認定品がある(そんなものはない)
という誤情報を、さも本当かのように主張しています。
私もAERAの記事だけを読むと、本当なのかなと信じてしまうところでした。
AERAやその関係者が創り出す印象誘導、本当に怖いですね。
★★★ ちなみに(余談を少し) ★★★
この点ではgoogleAIの回答も大いに間違っています。
AIについて詳しく調べると(2026/05/22現在)、
googleAI
・情報源の特徴:ネット上の情報が主な情報源
・信頼性:情報は新しいがネット上の多数の意見に偏る傾向
ChatGPT
・情報源:ディープラーニングによる根拠のある情報が元
・信頼性:ネットの意見に左右されないが情報鮮度は数ヶ月遅れる
といったAIの違いもわかりました。
googleAIでは、EPA基準を問うと「基準はある」と断言します。でも、その根拠を深く掘り下げて聞くと、途中で「私が間違っていました。EPA基準はありません」となります。
AIも万能ではなく、googleAIのように世論(ネットの情報)こそ正しいと判断しがちなAIは、それをそのまま信じる人がいるだろうことを想像すると、世論を間違った方向へ誘導する危険性を感じます。
AI時代に生きる私たちは、それぞれの特徴を理解しながら、距離をおいて使用することも大切だと痛感しました。
「花巻市の補助金対象はEPA基準」という誤情報
EPAには性能基準がないと知った私は、花巻市という公的な行政機関が本当にEPA基準を信じているのか、疑問に思うようになりました。
AERAは花巻市に直接取材したと書いていて、「花巻市の補助金事業はEPA基準を前提としている」と遠回しに、でも露骨に印象付けています。
誰が読んでも(もちろん私も)、そう理解すると思います。
でも、その花巻市の回答は本当なのか。
私は直接、花巻市の補助金担当部署に問い合わせてみることにしました。
まずは電話で、結論ありきではなく、普通の素の質問をしてみました。
私:
「熊よけスプレーの補助金対象の条件を教えてください」
花巻市担当者:
「商品にクマ用と表示されていれば問題ありません」
「クマ用と表示されていれば問題ない」という、あっさりとしたその回答には正直驚きました。
さらに、AERAの記事では、「花巻市が補助金のページに熊よけスプレーの性能数値を目安として示したのは、EPA基準を元にしたからだ」とあったので、その点も確認しました。
私:
「熊よけ関連補助金のページに、熊よけスプレーの性能の目安を示していますが、その理由は何ですか?」
花巻市担当者:
「市ではあくまで目安を示しただけで、これを目安に留めたのは、より幅広い製品を補助金対象とすることが目的です」
目安の根拠はわかりませんが、この「目安」としたことが、市にとって重要のようで、何度も強調されていました。特定のものを排除するのではなく、出来るだけ幅広く市民をサポートしたい、そういった気持ちを強く感じました。
これは口頭だけではまずいと思い、担当者の方には申し訳ありませんが、市の公式回答としてメールでの回答をお願いしました。快く承諾いただき、内容をメールでいただきました。(ご丁寧にありがとうございました)
回答は、花巻市公式回答として手元に保管しています。
花巻市の回答は、補助金事業を行う自治体として、納得感のあるものでした。
だって、市が個々の補助金申請に対し、個別にクマ撃退の性能まで検証して判断するのは、現実的ではないからです。
差し迫った市民への危険に対しスピーディーにサポートすることが、本来の補助金の役割のはずです。
AERAはいったい、どのような取材をして、存在すらしない米国EPA基準を元に花巻市が補助金可否の判断をしていると思ったのでしょうか。
もしかしたら、花巻市のホームページを見て、そう思っただけ?
AERAの、あまりにも事実とかけはなれた印象付けを行う編集方針には、正直恐怖すら感じます。
「花巻市はポリスマグナムを補助金対象外と返答した」という誤情報
私は同時に、花巻市に対して熊よけスプレーの補助金対象可否の判断について質問しました。
AERAの記事には、花巻市の担当者がこう言ったと書いていたからです。
AERAの取材による花巻市回答:
「ポリスマグナムは催涙スプレーで、クマ用の製品とは認められないので、補助金の支給対象外となります」
つまり、AERAの取材によると、花巻市は
ポリスマグナムは「催涙スプレー」なのでクマ用ではない
と言ってることになります。
この質問の回答も、実際の花巻市からの回答は全く別のものでした。(もちろんこれも公式回答としてメールを保管しています)
私の質問への花巻市の回答:
「補助金認否の判断は、製品の「クマ用」の表示と、成分の妥当性です。」
製品にクマ用と表示があり、成分が妥当なら良い。とてもシンプルで、わかりやすい判断基準です。
そもそも基本に立ち戻ると、このような撃退スプレーには、ここからが催涙スプレーで、ここからが熊よけスプレーだといった明確な線はありません。
両者ともベースとなる成分や機能は同じです。違いがあるとすれば成分の強さや噴射の性能です。強くし過ぎればヒトには危険だし、弱くし過ぎるとクマには不十分かもしれません。
要は、性能の調整次第ということです。
あえて成分の面で妥当性を考えるならば、アメリカのアラスカ実験レポート(多くの熊よけスプレーの妥当性の根拠となる査読済み論文)が参考になります。この論文では「成分はOCが相応しい」とされています。(ちなみにポリスマグナムの成分はOCです。)
催涙という言葉に注目すれば、その催涙効果はヒトにもクマにも等しく作用します。
つまり、催涙スプレーという大きなくくりがあり、その中でヒトに適している、クマに適しているといった違いがある、というのが正しい理解です。
それを知っているからこそ、このAERAが書いている
「花巻市担当者は、ポリスマグナムは催涙スプレーなのでクマ用ではないと言った」
という内容に違和感しかなかったわけです。
「ん?催涙スプレーだからクマ用ではない?どういう意味?」
当然の違和感ですよね。
ですが、実際の花巻市の担当者は、「表示と妥当性で判断します」とのこと。
これには納得しかありませんでした。
ポリスマグナムの熊よけスプレーのB-609(中型)やB-610(大型)は、クマ用の表示があり、成分や性能も妥当性があるし、実際にメーカーのフィールドテストや実ユーザーによるツキノワグマ撃退実例もあります。その全てが補助金対象の条件に一致しています。
ここに、ポリスマグナムを補助金対象外とする要素は見当たりません。
果たしてAERAは、書いていることが本当なら、いったいどのような取材をしたのでしょうか。望む回答を得るために偏った質問をしてないのか?と疑ってしまいます。なぜここまで、私の実際の確認と、AERA記事内容が食い違うのでしょうか。
この実体験から、AERAの記事は事実との違いが予想外に大きすぎて、事実の部分を探すほうがむしろ大変なのではと思いました。
AERAの記事という時点で予想はできることですが、改めて衝撃でした。
存在しない回答「米国製造元がクマ用ではないと言った」
これは大きな問題ある内容です。
まずは大前提として、米国製造元は一切そのような回答をしていません。
これは、メーカーが米国製造元へ直接確認した結果なので明らかです。
証拠となる製造元が回答したメールもあります。
米国製造元は、日本のAERAからの問い合わせはあったものの、内容に疑義があったため回答をしていないとの確認がとれています。
しかしAERAは、米国製造元から直接回答が得られなかったせいなのか、記事では「ある人が質問して回答があった」と称し、その回答を掲載しています。米国製造元が「ポリスマグナムはクマ用ではない」と回答した、というものです。
ところが、この「ある人の行った質問」についても、米国製造元へ確認したところ、そのような質問を受けた記録も、回答した記録もないとのことでした。
果たして記事で紹介された米国製造元の回答は、本当に存在するのでしょうか?
そして、もう一点考慮しなければならないのは、アメリカでは人や環境に対する安全性の観点から、米国の法に則りEPAに登録しなければ「クマ用と表示できない」という、アメリカ独自の事情です。
AERAが掲載している問合せの存在は確認できませんが、仮に米国製造元に「クマに使用できるのか?」と質問したとするならば、ポリスマグナムがEPA登録されてない限り、米国製造元は恐らく「クマ用ではない(EPAに登録してない)」と答えるでしょう。
このような、国による事情などを考慮せず、日本人として聞きたかった
「クマに使えるのか?」
に対して、答えた米国企業の
「クマ用として販売してない(米国で)」
という答えの意味、さらにそれを日本人の単純解釈で
「クマには使えないと確認した」
と理解する、そのような誤解が生じる土壌があると言えます。
国による法律や制度の違いを理解していなかったり、業界の理解が浅いと、そういう誤解が起こりえるということです。
それ以前に、メーカーは米国製造元に再三に渡り、記事掲載の問合せ対応の事実が実在するのか確認を行っています。米国製造元は何度も入念に調査を実施し、そのような問い合わせ対応を行った事実はないという回答を得ています。これこそが最も重要な事実です。
つまり、AERA記事が示す製造元とのやりとりは、その存在が確認できないのです。
なお、ポリスマグナムは実際にクロクマ(ツキノワグマ)を対象にフィールドテストを行い撃退性能を証明しています。そして、国内では複数のユーザー(猟友会を含む)が実際にツキノワグマの撃退に成功しており、性能を裏付けています。この事実が全てと言えます。
ツキノワグマに使用できることが証明されており、なおかつ北米ヒグマ用よりも人に対しても、ツキノワグマに対しても、自然環境に対しても過剰ではない、そのようなポリスマグナムが多くの方に愛用されているのは当然ではないでしょうか。
まとめ
あまりにも一方的で偏っている、ある意味では結論ありきとも見えかねないAERAの報道によって、一部の方に間違った理解が広がっている可能性があるので、今回はそのことについて詳しく解説しました。
もちろん、そんな事はわかってるという方が大半だとは思いますが、マスコミによる誤情報なので信じる方もいるかもしれません。
旧来のマスメディアがオールドメディアと呼ばれ始めて久しいですが、今回改めてオールドメディアの怖さを当事者として思い知らされました。
報道をする自由、しない自由、誤解させる表現、偏向した内容、読者や視聴者を特定の結論に誘導する姿勢。オールドメディアは本当に恐いですね。
私も含め、情報の取捨選択には慎重になりたいものです。
様々な情報が溢れている昨今、皆様も情報の受け取りには慎重になりましょう。













