スタンガンの所持と法律

2017年9月4日

スタンガンの所持と法律

スタンガンの所持は違法なのか、多くの方が悩むところだと思います。

もちろんスタンガンは護身用として、万一のときに身を守るもの。当店のような護身用品専門店では「スタンガンがあったおかげで助かりました」という声が聞かれる一方で、事件としてニュースになるような悪用事件も発生しています。

今回はスタンガンの所持について、現実と法律の両面から考えてみます。

所持と所有の違い

まず、似た言葉である所有と所持の違いを明確にしましょう。

所有と所持の違い

所有:自分のものとして有すること

所持:身につけて持ち歩くこと

この通り、所有と所持は明らかに違いますね。

所有はスタンガンを購入すれば、それを家に置いていても店舗に備えても、自分のものとして所有することになります。

所持は、実際にスタンガンを身につけていることです。ホルスターを利用して腰に下げたり、クルマのトランクに入れていたり、カバンやポケットに入れていたりすると所持していることになります。

スタンガンの所有は合法

スタンガンの所有は合法です。

スタンガンを自分のものとして有することは、法律に一切触れません。

スタンガンそのものが違法であれば当然ながら堂々と販売できるはずもありませんね。

従って、自宅に備える、店舗や事務所に備える、など外で持ち歩かない場合は完全に合法となります。

スタンガンの所持は微妙

スタンガンの所持とは、実際に身につけて外を出歩くことを指します。

このとき、法律に触れる恐れがあります。

それが軽犯罪法です。

軽犯罪法は、私たちの身の回りの生活における様々な細かいルールを規定した法律で、その中に「正当な理由なく武器などを持ち歩いてはならない」という項目があります。

そして、スタンガンの所持に対して「正当な理由もなく武器を持ち歩いているのでは?」という疑いがかけられるわけです。

軽犯罪法とスタンガンの実際問題

軽犯罪法には「正当な理由なく武器などを持ち歩いてはならない」とされてます。

それでは具体的に「正当な理由」と「武器など」について考えてみましょう。

命を守るほど正当な理由はないはずなのに

私たちが自分の命を守るためにスタンガンを所持することは正当な理由ではないのか?自分の命を守るという理由以上に正当な理由などあるのでしょうか?考えればわかることですね。

しかし残念ながら、警察の答えは「NO」です。警察の立場はあくまで、未来の被害者に自衛の手段を認めることではなく、未来の犯罪者を取り締まることです。だから答えは当然NOなのです。

警察は信じられないことに「あなたが自分の身を守ることは正当ではない」と言います。なぜなら犯罪は全て未然に警察が防いでいるから?冗談でしょう?警察によると、私たちはどんなに危険を感じても丸腰でいるべきであり、襲われれば抵抗手段もないまま110番すれば済み、犯罪被害に遭いながら私たちは10分から15分待つべきだと言います。

皆さんはどう思いますか?もし一瞬でも警察の考えに賛成を覚えたなら、あなたは自分の奥さんや娘さんがストーカー被害にあっていても、同じことを言えますか?

スタンガンは武器なのか

軽犯罪法でいう武器とは、具体的には「鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」と記述されています。スタンガンは果たしてこれに該当するのでしょうか。

スタンガンは相手に電気を流して動けなくさせますが、至って安全な護身具です。電流は人体に安全であり、相手に怪我させたり後遺症を残したりすることはありません。この安全であるスタンガンは、果たして重大な害を与える武器なのでしょうか。

これも、実際問題としてスタンガンの安全性などは論じられず、残念ながら警察は「危険な武器である」とみなします。やはり悪用事例があるから、警察としては取り上げたい、ただそれだけが目的ということです。

2分される考え方

冒頭でも申し上げたとおり、当店のような護身用品専門店では「スタンガンがあったおかげで助かりました」という声が聞かれる一方で、事件としてニュースになるような悪用事件も発生しています。

護身用品を持っていて良かった

助かったという人は、もしスタンガンがなかったらどうなっていたのだろうと恐怖を覚え、スタンガンを持っていて良かったと言います。スタンガンで救われたのだし、スタンガンがなければ最悪の場合命を落としていた可能性もあるわけですから当然です。

護身用品なんかなくなってしまえばいい

悪用されたというニュースだけを見る人は、スタンガンなんか取り締まってしまえばいい、なくなってしまえばいい、と考えます。(スタンガンがなくなれば犯罪がなくなるとは到底思えませんが。)これもニュースだけを見た偏った考えではありますが、わからなくもないですね。

このように、スタンガンの所持については賛否両論です。そして、スタンガンの所持に関する唯一の法律である軽犯罪法は、犯罪被害者の味方にはなってくれません。

最後は自分の判断

スタンガンの所持(持ち歩き)は軽犯罪法に抵触する可能性があります。なぜなら「自分の命を守るため」という理由が正当ではないし、「だれにも怪我させない安全なスタンガン」はとても危険な武器だからというわけです。説明してて頭が混乱してきました。

でもこれが今の社会の現実です。

だから、ひとつだけ自分に問いかけてみてください。

犯人と一対一で対峙して、凶器の餌食になるそのときに、あなたは丸腰でいたことが正しかったと納得できますか?納得できない理由でスタンガンの所持を制限する軽犯罪法を守ってて良かったと、本当に心から思えますか?

では質問を変えてみましょう。

あなたは津波や土石流や火砕流からクルマで逃げているとして、その道路の制限速度が30km/hだからといって道路交通法を守り、飲み込まれてしまってもいいですか?アクセルを踏んで助かろうとしませんか?

軽犯罪法がある以上、スタンガンの所持は皆様個々の判断になります。しかし、スタンガンがあったから助かったという声を実際にいただくことも事実です。こういった方々は、スタンガンを所持していなかったらどうなっていたのでしょう。そう考えると心底恐ろしくなります。

身の危険を感じる、周辺の治安が悪化した、知人が危険な目に遭ったなど、スタンガンを必要と感じるきっかけは人それぞれです。しかし、そうやって自分の安全について真剣に考えたときこそ、護身用品が必要なタイミングです。

火事なんて一生起きないかもしれないけど、私たちは消火器を備えます。外出も同じ。何も起こらなければそれで良いが、何かあったときに対処できるかが一番大切な問題なのです。

ーーー2019/02/06 以下の逮捕についての説明を更新 交通違反と同じという記述を削除 前歴が残るという説明を残らないに変更

余談になりますが、軽犯罪法はむやみに濫用してはならないと定められています。さらに、もし警察にスタンガンが発見されても「住所や氏名が不明の場合」や「犯罪の捜査をするために出頭を求められ、正当な理由がなく出頭に応じない場合」や「逃走の恐れがある場合」に該当しなければ警察も逮捕ができません。もし警察にスタンガンの所持について質問されたら、警察の質問や要請には素直に応じ、逃げるようなことをしなければ逮捕もありませんし、前科も前歴も付きません。

参考:軽犯罪法違反になる意外な行為と処分・罰則内容を解説(刑事事件弁護士ナビ)

何よりも大事な命です。もっと真剣に、現実的に、護身用品の所持の効果とリスクを考えて、後悔のない判断をしてください。