スタンガン使用時に相手に触れていると自分も感電するのか
護身用品を使う場面というものは、突然起こる緊急事態であることもあり、全く予測がつきません。
護身用スタンガンを使用する場面においても同様で、場所、環境、自分の状況、相手の様子、凶器の有無など、状況は千差万別です。
想像通りにスタンガンを相手に押しつけ、電気ショックを与えて済む場合も当然あるでしょう。しかし、相手と組合っていたり、相手が抱きついてきていたり、相手がこちらを掴んでいる可能性もあります。
要は、スタンガン使用時には、状況次第では自分が相手に触れている可能性があるということです。
今回は、当店に多く寄せられる
スタンガン使用時に、こちらが相手に触れていたらこちらも感電してしまうのか?
という疑問について、詳しく説明します。
相手に触れていても使用者は感電しない
スタンガンで電気ショックを与えるとき、相手の体の一部が自分に触れていても自分が感電することはありません。
スタンガンの電気は、スタンガンを接触させた相手の体内だけに流れるので、使用者にまで電気が流れてくることはありません。
それでは、なぜ自分の体には流れてこないのでしょうか。その理由を詳しく考えてみましょう。
使用者自身が感電しない理由
電気は抵抗の少ないルートを流れる
電気はその特性として、最も流れやすいルートを流れます。 電気が流れやすいルートとは何か。それは最も電気抵抗が少ないルートです。
日常的な例として、電柱の電線について考えてみます。電柱の上には普通は3本の電線が張られています。当然ですが電気は電線の中を流れています。そして、私たちが電柱を触っても感電しません。しかし、なぜ電気は電柱を流れず、電線だけに流れるのでしょうか。それは電線の電気抵抗が少ないからなのです。
それでは人体に当てたスタンガンの場合、電気が流れるルートはどのようになるのでしょう。
スタンガンの場合の電気のルートは電極間
スタンガンを人体に当ててスイッチを入れると、先端の対になった電極間に電圧が発生し、片方の電極からもう片方の電極へ電流が流れます。
スタンガンで発生した電気は、電極の両端において電極間で流れる。
スタンガンを何にも当てていない場合の流れるルート
スタンガンを何にも当ててない場合は、電極間には空気しか存在しません。この場合、電気が流れるルートは最も電気抵抗の少ない空気中の最短ルートとなります。そのため、電気は片方の電極からもう片方の電極へ直線で流れます。
電気が空気中を流れるときは、空気の分子をオゾン化して破壊ながら流れます。これはカミナリと同じ現象で、眩しい閃光と音を発します。この現象を、スタンガンは威嚇スパークとして利用しています。
なぜ電気が空気の中を流れるのか。それは空気しか流れるルートがないからです。空気は電気をとても流しにくい気体です。なぜなら電気抵抗がとても大きいからです。しかし、それでもルートが空気しかなく、電圧が高い場合、電気は空気中を流れます。
では電極を相手の体に当てた場合、電気はどのように流れるのでしょうか。
スタンガンを人体に当てている場合の流れるルート
スタンガンの電極を人体に当てて電気を流すと、電気は人体を流れます。
先述のように、最短距離である空気を伝わって流れる代わりに遠回りをして人体に流れる理由は、接触している人体を伝わって流れるほうが電気抵抗が少ないからです。人体に当てた場合には空気中を流れないためスパークは発生しません。
人間の体内においても電気が流れる特性は変わらず、最も電気抵抗の少ないルートを流れます。人体は細胞や体液、血液など構成が複雑です。それぞれ電気抵抗が違うため、電気は電気抵抗の最も少ないルートを流れ、空気のように単純に直線に流れることはありません。
スタンガンを相手に当てて通電したからといって、電流は接触した電極先端から反対の電極までを直線で結んだ皮膚の中を流れるわけではなく(経験した感想から言うと皮膚には流れてない)、皮膚よりも体内側を流れます。結果として皮膚の下にある神経網に電気ショックを与えますので、神経が受けたショックと痛みは神経を伝わり全身に及びます。これは、体感的には体中に電気が流れている感覚ではなく、体中の神経がショックを受けるような感覚です。
接触している別の人体へ流れない理由
ここまで、電気が流れるルートについて細かく解説してきましたが、基本理論はとてもシンプルです。
電気は電気抵抗の最も少ないルートを流れる。
このような電気の特性から、スタンガンの先端にある電極間を流れようとする電気が、大きく遠回りして使用者の体内まで流れることはありません。その理由は、使用者の体を経るルートの電気抵抗がとても大きなためです。
従って、いくら使用者が相手に触れていようが、相手から掴まれていようが、使用者にまで電気が伝わることはありません。
スタンガンを使用する場合、相手に触れていても使用者は感電しませんので安心してください。
証明のため実験
これまで、
- 電気は電気抵抗の最も少ないルートを流れる。
- 相手に触れていても使用者が感電することはない。
と説明してきましたが、本当かな?と思った方もいるはず(笑)
それでは証明のため実験をしてみましょう。空き缶を片手に持ち、もう片手に持ったスタンガンで空き缶を通電するという実験です。
この実験でわかるのは、電気は電気抵抗の小さな空き缶を流れるため、手には流れないということです。
この通り、空き缶を持った左手は感電せず、全く平気でした。
この空き缶が相手の体であり、手が自分の体だと置き換えて考えると、例え相手に触れていても自分が感電しないことがわかります。
ずぶ濡れの場合は注意が必要
スタンガン本体や使用者の手が水などで濡れていると、話は大きく変わってきます。
電気は電気抵抗の小さなルートを流れますが、不純物を含んだ一般的な水は電気抵抗が低く、電気を流しやすい特性があります。濡れた手でドライヤーを使ってはならないという一般常識も同じ理由です。相手も自分もずぶ濡れの場合は、場合によっては水を伝って使用者に電気が流れてくる可能性がありますので注意してください。
スタンガン本体や使用者の手が濡れている場合、最悪の場合は握っている手が感電してしまう可能性があります。もっともスタンガンそのものは電気製品ですから、感電以前に壊れる可能性もありますが、いずれにしても濡れた状態では絶対に使用しないように注意が必要です。
少しの雨や水滴などは問題ありませんが、ずぶ濡れ時は危険なので注意してください。
最後に
今回はよくある質問から「スタンガンを相手に当てた時、相手に触れていたら自分も感電するのか」という質問について詳しく説明しました。
結論
- スタンガンを使用する場合、相手に触れていても使用者は感電しない。
- ただし、水で濡れている場合には注意が必要。
スタンガンを始めとした護身用品は、緊急時に切迫した状況下で使用するものです。その場の状況によっては相手に触れている可能性も当然ながらありますが、それでも自分の体まで感電してしまうことはありませんので安心してください。
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